NSAIDSは手術室で投与する鎮痛薬の中でもかなり使用頻度の高いものですが、成人発症の喘息患者さんへのNSAIDS投与は要注意です。

 

アスピリンを含むNSAIDSに対する過敏反応には2種類あります。アレルギー反応と偽アレルギー反応です。      

 

アレルギー反応とは特定の物質に対するIgEを介した抗原抗体反応です。単一または同じ分子構造を持つ薬剤に対して起こります。症状は発疹からアナフィラキシーショックまで様々な程度のものがあります。

 

偽アレルギー反応とはアラキドン酸代謝亢進によるロイコトリエンなどの炎症物質の過剰産生により起こると考えられています。COX-1(シクロオキシゲナーゼ-1)を阻害する薬剤全てで起こるとされています。

 

 いわゆるアスピリン喘息とは後者の偽アレルギー反応により起こります。薬剤投与後30分?3時間で鼻閉、鼻汁、顔面紅潮、結膜充血、喘息症状などが生じます。喘息発作は通常の喘息発作よりも重症化することが多く難治性です。アスピリン喘息というと、アスピリンが原因のような印象を受けますが、実はそうではありません。もともと何らかの原因により気道で炎症物質が過剰産生されている人が、更に産生を促進するNSAIDS(作用機序を思い出してください)を投与されると症状が増悪する、というのが本態です。NSAIDSは病態の原因ではなく増悪因子にすぎないということです。ということは、NSAIDS使用歴のない人でも起こりうるのです。どのようにしてリスクを予想するか。リスク患者には以下のような病歴の典型的特徴があります。

 

20代後半から30代前半で難治性の鼻炎肥厚性鼻副鼻腔炎ポリープや嗅覚の低下下気道にも炎症が波及喘息と診断される

この課程の後半部分でCOX-1阻害剤を投与されて喘息発作を起こすと、いわゆるアスピリン喘息といわれます。この特徴的な病歴が、成人発症の喘息には注意、の所以です。(小児期発症の喘息患者には比較的少ないようです。)

最近では喘息という下気道に限局した名称ではなく、Aspirin Exacerbated Respiratory Disease; AERDという呼ばれ方をしているようです。

  

成人発症の喘息患者さんがいたら術前診察時に上記のような病歴がないか聞くのが良いと思われます。典型的な病歴があればNSAIDSは使用しないか、厳重な注意のもと使用するのが賢明と思われます。代替の鎮痛法を身につけたいものです。

 

なお、すでにアスピリンに対する過敏反応の既往がある場合、アレルギーか偽アレルギー反応かの鑑別は前述のとおり症状も類似しており、かなり詳細な病歴聴取が必要です。君子危うきに近寄らずでしょうか。

   

資料はUpToDate online  “Aspirin Exacerbated Respiratory Disease” でした。