ESRA(The European Society of Regional Anaesthesia)参加レポート

 
9月8日から11日までポルトガルのポルトにて第29回ANNUAL ESRA CONGRESSが開催され、
笹川と東京医療センターから勉強にいらした杉浦先生と二人で参加してきました。

会場は昔貿易センターだったところのようです。城のようです。
 
以前より私たちの教室ではNYSORAと呼ばれる海外の神経ブロックの小学会に毎年参加しています。
今年度からNYSORAがWorld Congressとなり、前回はドバイで開催され多数の医局員が参加し
Congress awardもいただくことができました。
 
NYSORAでは豊富なworkshopが魅力の一つです。
しかし、ここ数年の参加と、日本でのworkshopが充実してきたこともあり、一般的なエコーガイドのworkshopをわざわざ受講しなくてもよいのではと感じていたところESRAの存在を知りました。
 
ヨーロッパは神経ブロック中心に麻酔が行われてきた歴史的経緯もあり、ESRAの歴史は古く、今回で第29回にもなります。特に遺体を使用して実際の解剖をよりわかりやすく理解させるcadaver workshopが豊富で(日本ではなかなか難しそうですよね)、私も今後の大学教育システムの一つにcadaver workshopを組み込むためその手法を学ぶことを目的に行ってきました。
 
さて今回のcongressで興味深かった内容について何点か記載します。
 
一つはcontinuous wound infusionのカテーテルが多数散見されたことです。
このカテーテルは硬膜外麻酔に使用するようなカテーテルをmulti-holeにしたもので、
創部から少し離れた部位から針を穿刺して創部にカテを留置してきます。

 
カテーテルを留置しないで局所麻酔薬を閉創直前に直接浸潤させ鎮痛を得る考え方は、以前自治医大さいたま医療センターの長田先生が総説で紹介されているのを読んでからこの様な種類の鎮痛法に興味をもっていました。
このタイプのカテーテルを使用したデータもいくつかポスターで発表されていましたが、私が期待しているほどVASが減少していないことからIVPCAのような補助デバイスは必要か、感染を含む創傷治癒への影響、時間5~10ml/h使用した局所麻酔薬の処理(創部から液漏れして大変じゃないのかな?)などの疑問は残りました。
 
もう一つは今回の目的でもあったcadaver workshopです。
このworkshopはoffsiteで行われるとあったのでどこでやるのだろうと思っていたらバスに乗り込んでポルト市内にある大学の解剖学教室へ。写真を撮ろうとして捕まりました(泣)。よって解剖の写真などはここに掲載できないのですが想像して読んでください。
今回は全体で2時間のworkshopでした。会場には遺体が4体準備されており、すでに目標とする神経の部分が解剖されてありました。遺体はすべてホルマリンなどの処理がされていないfresh cadaverでしたので神経や血管、筋肉の観察がとてもしやすい状態でした。
遺体は上肢用に2体、下肢用に2体あり、体幹部の観察を行うものはありませんでした。
上肢は腋窩と肘部、手関節周辺を解剖したものと、鎖骨周辺の解剖したものが一体ずつ、下肢は腹臥位で坐骨神経を臀部、膝窩部とで解剖したもの、仰臥位でfemoral, obturator周辺を解剖したもの一体でした。
それぞれ6人くらいのグループで30分ずつラウンドして、合計二時間です。
実際に解剖された神経をみるのは学生時代以来でしたが、本当に学生時代に勉強したのかというほど解剖がわからず(英語の名前はもちろん覚え切れてないですし)、エコーで日々観察している構造の実際を知ることができて大変有意義でした。

ポルトはジブリの魔女の宅急便のモデルになった町です。
 
さて、ESRAもう一つの目玉はESRA Diplomaという資格試験です。
経食道エコーでの資格試験はJB-POTが日本で普及し、さらに当院ではアメリカの認定制度NBE Diploma取得を目指した講習会などを行っています。
神経ブロックの領域に認定資格が策定されるかどうかはわかりませんが、ESRAでは世界に先駆けてESRA Diplomaという認定制度を確立しています。
 
この試験は二年間にわたり行われます。
一年目は筆記試験100問のマルチプルチョイスです。2時間の制限時間で回答するようですが、NBEの際も感じたことですが自分の母国語でない言語で試験を受けると余計に時間がかかってしまいそうです(頭の中で翻訳しているからですね。まだまだです・・)。
この試験を受けるためにcadaver workshopを含めた二つのworkshopを受講している必要があります。この条件をクリアするためにmeetingに参加したという経緯もあります。
Cadaver workshopだけを大きく取り上げた会もこの冬にオーストリアであるようです。定員がすぐに埋まってしまうようですので早めのチェックが必要かと思います。
 
二年目は実地試験です。シミュレーターか人間のモデルを使用して25分間口頭試験を行うようです。今回受講した雰囲気ではlandmark及びultrasound guidedの両方を重視しているようですので、landmarkとなるanatomy、神経刺激装置を使用した方法、エコーガイドでの解剖などを英語でdiscussionできることが必要になりそうでした。
 
ポルトはポルトガル発祥の地であり、ポートワイン発祥の地でもあります。休み時間にポートワインの酒蔵にお邪魔して40年もののポートワインをいただき、教室のみなさんへのお土産にしました。

ポートワインは酒精強化ワイン。甘くて複雑な味わいでおいしいです。
 
来年のESRAはドイツのドレスデンで行われるようです。
なかなか行く機会のないヨーロッパの地方都市にいけるのもこの会の魅力の一つですね。
旭川医大麻酔科ではこのような海外学会への参加を大いにサポートしてくれます。
是非皆さん来年ドレスデンでお会いしましょう!