Necrotizing Fasciitis as a Complication of a Continuous Sciatic Nerve Catheter Using the Lateral Popliteal Approach

 

Regional Anesthesia and Pain Medicine • Volume 41, Number 6, November-December 2016

 

今回はカテーテルを留置して持続坐骨神経ブロックを行った後に壊死性筋膜炎を生じた症例を紹介しました。

 

【背景】

壊死性筋膜炎は溶血性連鎖球菌などのグラム陽性球菌や、大腸菌などのグラム陰性桿菌などによって生じる。炎症と壊死が筋膜・筋肉・皮下組織などに急速に広がる特徴を持つ。従って、早期の診断が重要であり、抗菌薬を適切に投与する必要がある。また、場合によってはデブリドマンが必要になることもある疾患である。

末梢神経ブロックに関連して生じることは非常にまれで、ワンショットの神経ブロックのあとに生じたものが数例報告されている。そのうち2例は

  • 肩関節内にステロイドを注入した症例、
  • 股関節の滑液包にステロイドを注入した症例である。

持続注入における壊死性筋膜炎の報告はこれまで1例のみ。(2008年のA&A。持続斜角筋間ブロック後に生じた頸部の蜂窩織炎+縦隔炎)

 

【症例】

症例は58歳の女性で、右の第2中足骨の骨切除が予定された。関節リウマチ、シェーグレン症候群、横断性脊髄炎、強膜炎、高血圧、脂質異常症、胃食道逆流症などの合併症を有し、さらにはmast cell disorderにより43の物質に対してアレルギーを持っていた。その中には9種類の鎮痛剤、2種類の降圧剤、2種類のステロイド、5種類の免疫抑制剤、13種類の抗生物質も含まれていた。そして、これらの合併症に対して、17mg/日のプレドニゾンを内服していた。

論文の著者らは、術中術後の鎮痛プランを以下のように立てた。

・術中:坐骨神経ブロック

・術後:持続坐骨神経ブロック+フェンタニルパッチ+トラマドール内服

 

ブロックは、

・指導医の監視のもと区域麻酔のフェローが実施。特に問題なく終了した。

・坐骨神経ブロック膝窩アプローチ(外側から穿刺。0.1%ロピバカインを使用)。

・手技は帽子とマスク、滅菌手袋を着用して施行。

・消毒はクロルヘキシジン+エタノールで3回→乾くのを待って穿刺。

・周術期の抗菌薬投与は執刀前にバンコマイシンを投与。←カテーテル留置から1時間経過していた。

 

手術中はフェンタニル75μg、ケタミン:10mg、ミダゾラム:1mgを投与しながらのMonitored Anesthesia Careを行った。術後に伏在神経ブロックを追加(2%メピバカインを使用)した。

術後鎮痛は

・フェンタニルパッチ:12μg/h

・トラマドール:50mgを8時間おき、14日分 とした。

・POD1に退院。

・POD1~4の間は毎日、外来でカテーテルのフォローアップ。

・POD4の午後にカテーテル抜去。この間特に症状なし。

・POD5も特に症状なし。

・POD6:刺入部の発赤を主訴に整形外科外来を受診。→発赤のみ。

・POD7:発熱、自発痛、圧痛、膝関節の運動困難となる。→救急外来を受診。

 

(論文中のFigureには、①POD6の午前、②同日午後、③POD7午前の右膝外側の写真が掲載してあります。POD6の午前午後では発赤の範囲は大差ありませんが、POD7午前の写真では明らかに発赤の範囲が拡大していることがわかります。)

 

・血液検査ではWBC31000、CRP18.4と炎症反応が上昇。

・右下肢CTでは刺入部周囲の浮腫と、ガス像あり。(論文中のFigureに掲載されています。ガス像は大腿の半分ぐらいまで頭側に広がっています。)

 

すぐにドレナージを施行。創部の培養からはメチシリンに感受性のある黄色ブドウ球菌が検出された。その後は6週間の経静脈的エトラペネムの投与が行われ、その後に創閉鎖して特に問題なく退院した。

 

【考察】

カテーテルを用いた持続末梢神経ブロックには、以下の利点欠点があるといわれている。

【利点】

・POD0~2の間の痛みを軽減する

・オピオイドの使用量が減る

・吐き気が少ない

・患者の満足度が高い

 

【欠点:感染などに関連して】

・炎症:3~4%

・カテーテルの細菌コロニー形成:6~57%

・感染:0~3%→検出される細菌は、表皮ブドウ球菌・グラム陰性桿菌・黄色ブドウ球菌

 

カテーテルを用いた持続末梢神経ブロックの感染に関連するリスクファクターとしては

・予防的抗菌薬なし

・持続投与が48時間を超える

・腋窩・大腿・腰神経叢・斜角筋間

・被覆材なし、もしくは頻回の交換

が言われている。

これまでに報告されたカテーテルを用いた持続末梢神経ブロックに関連した感染としては「膿瘍を形成した」との報告もあるが発生率は不明。報告がある持続ブロックは以下の3つ。

  • 腰神経叢ブロック
  • 腋窩ブロック
  • 斜角筋間ブロック

また、壊死性筋膜炎のリスクファクターとしては、外傷後、腎移植後、糖尿病、薬剤(プレドニゾン・ジクロフェナク・ナイキサンなど。特にプレドニゾンは慢性的に7.5mg/日以上の内服があると易感染性に関連があるとされている)などが言われている。今回の患者については、これらの薬剤に加え、ヒドロキシクロロキン(SLEやその他の膠原病の症状緩和に用いる)も内服していた。ヒドロキシクロロキンを内服していた患者に生じた壊死性筋膜炎はこれまでに報告がない。

【結論】

壊死性筋膜炎は重篤な合併症であるため、カテーテルを留置した場合は厳重なフォローアップが必要である。また、早期診断と早期治療開始が重要である。

 

【感想】

推測ですが、「使える鎮痛剤が限られていたため、本来なら回避したいブロック(カテーテル留置)を施行した。」といったところでしょうか。カテーテルを抜いた後に発症し、しかも急速に進行した、というところが何とも恐ろしいです。同じような症例が担当になった場合、カテーテル留置には慎重にならざるを得ないですね。