The effect of tracheal tube cuffs filled with air, saline or alkalinized lidocaine on haemodynamic changes and laryngotracheal morbidity in children: a randomisedd, controlled trial

2016 .12.Anaesthesia

Journal of the Association of Anaesthetists of Great Britain and Ireland

Impact Factor: 3.794

 

「小児挿管チューブのカフを空気、生食、アルカリ化リドカインそれぞれで満たした場合の、血行動態変化と喉頭気管合併症について」

を読んでみました。

 

<Introduction>

  • 昔は気道粘膜への損傷リスクを避けるためにカフなしチューブが選択されていた
  • 最近は、カフありが推奨され、カフの十分な柔軟性と適切なカフ圧の場合は、気道系損傷と関係してこないし、誤嚥を防ぎ、事故抜去の可能性も低くなる
  • 成人では気管チューブのカフにアルカリ化リドカインを満たした場合に術後の喉頭気管への合併症が少なくなったとの報告がある
  • 今回は、小児の気管チューブのカフ内にアルカリ化リドカインを満たして、抜管前後の血行動態の変化、術後の喉頭気管周辺の不都合を検証してみた

<methods>

  • 3-13歳まで、ASA 1 or 2、164名
  • 挿管する全身麻酔症例
  • 除外項目:頸部周囲奇形、既挿管・気切、喘鳴あり、頸部のオペ、経鼻・経口胃管を入れた場合、オペ時間<60分、ステロイド使用、頸部局所麻酔使用
  • カフ付き気管チューブのサイズ選択式はMotoyamaの式→I.D.(mm)=3.5 + 年齢(歳) / 4
  • ランダムにカフ内を空気生食0.5%リドカイン1%リドカイン で4群(41名ずつ)に分ける

※アルカリ化リドカイン組成

①0.5%=1%リドカイン9.5ml+蒸留水9.5ml+8.4%NaHCO3 1ml(おそらくメイロン)

②1%=1%リドカイン19ml+8.4%NaHCO3 1mL

 

  • 麻酔導入 セボ4-5%+100%O2
  • Alfentanil30μg/kg or fentanyl 3μg/kg+propofol 2-3mg/kg+Rocuroniumu 0.6mg/kg
  • 挿管後に4群それぞれのものを手動陽圧の状態でゆっくりカフに注入しモレがないまでとりあえず入れる
  • 機械換気 TV 8ml/kg にしてから初めてパイロットバルーンでカフ圧20cmH2O にする
  • その後常に、パイロットバルーンを使用してカフ圧を20cmH2Oにする
  • 麻酔維持 2%セボ+50%O2,2L/min
  • 追加の麻薬は必要であればその都度
  • 挿管30分後、リドカイン2群から末梢静脈血採取
  • 手術終了後:ondansetron 0.15mg/kg +tramadol hydrochloride 1mg/kg
  • 筋弛緩拮抗:TOFを確認してatropine 15μg/kg+neostigmine 30μg/kg
  • <Primary outcome>
  • 血行動態:抜管前後5分の血圧、脈拍
  • 喉頭気管部の不都合:咳、発声困難、咽頭痛の有無をyes,noの2択で問診を2回する(①術直後のRecovery room内②抜管8時間後)

 

<結果>

①患者背景、オペ内容

麻酔時間、笑気or空気、挿管回数、alfentanil or fentanylの使用量に有意差なし

②抜管前後の血行動態

  • 1%L群vs空気群:収縮期血圧の変化は1%L群で有意に少ない
  • 0.5%L群vs生食群:拡張期血圧の変化は0.5%L群で有意に少ない
  • L群vs空気群、生食群:脈拍数の変化はL群で有意に少ない

③術後の喉頭気管の不都合

咳、発声困難には有意差がないが、咽頭痛のみL群で有意に少ない

<Discussion>

  • カフ内容が空気よりも、アルカリ化リドカインの方が、血行動態の変化が少なく、術後の咽頭痛を減らせるとわかった
  • 近年の報告ではアルカリ化・非アルカリ化問わず、カフ内をリドカインで満たすと術後の咽頭痛が減るとある
  • 成人ではカフ内リドカインが抜管前後の血行動態変化を最小限にさせると報告がある
  • (挿管30分後のリドカイン血中濃度から示唆して、カフ内から気管粘膜にリドカインが浸透していると考えられる(<5μg/mL))
  • 咳を抑えるためには、リドカイン血中濃度が3μg/mL以上が必要と考えられるが、この濃度は今回のようなカフ内リドカインの気管壁浸透だけだと達成できない
  • 今回のstudyで、抜管直後のrecovery室にて咽頭痛の発生が比較的低かったのは、術中に使用した麻酔薬やオピオイドの影響も考えられる
  • 生後3か月から9歳くらいまでのリドカインの半減期が109分にも関わらず、抜管8時間後の咽頭痛発生が低かったのは、K-Ca channels やGタンパク質共役受容体を介して(何らかの別の機序)のリドカインの鎮痛作用などがあるからと考えられる

<Conclusion>

1%アルカリ化リドカインを、挿管チューブのカフ内に満たすことで、抜管時の血行動態変化を減らすことが可能であり、術後の咽頭痛も減らせるので、カフ内には、空気や生食ではなく、リドカインを使用するべきである

 

とのことでした。

カフ内にリドカインを入れなくとも麻酔薬、麻薬をうまく使うことで、抜管時の血圧変動はそれなりに抑えられることはできるかなとは思いますが、術後の咽頭痛が抑えられるという点では魅力的かなと思いました。