以下の論文を紹介します。
Evidence basis for using perineural dexmedetomidine to enhance the quality of brachial plexus nerve blocks:
a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
Br J Anaesth (2017) 118 (2): 167-181.

●背景
・2013年に、今回と同様の腕神経叢ブロックにおけるデクスメデトミジン(以下:DEX)の添加についてのレビューを発表したが、臨床的な有用性については実証できなかった。
・以前の発表からより多くの腕神経叢ブロックにおけるDEXの添加についての研究が行われており、DEXの感覚神経ブロック時間の延長を評価することを目的に、今回再調査することとした。
●方法
●方法
・文献データベース:MEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CINAHL、Scopus、Goole Scholar 
・研究の種類:ランダム化比較試験
・期間:1985年1月~2016年2月
・検索ワード:’analgesia, anesthesia, adjunct, adjuvant, anesthetics local, nerve block, perineural, regional anesthesia ,upper extremity( arm, brachial plexus, forearm, elbow, humerus, radius, shoulder, wrist)
・研究:成人のみ(年齢 18歳以上)、英語論文のみ
・評価者は、 2人の研究者が独自に検索。
・研究の異質性heterogeneityの評価:I2統計量を用いて評価。
⇒ 50%を超えると異質性は大きいと判断。
・出版バイアスの存在の評価:フェンネルプロットを用いて評価。
≪アウトカムの評価≫
●Primary outcome
・感覚神経ブロックの持続時間(分)
(局所麻酔薬注入完了から完全に感覚神経ブロックから回復した時間)
●Secondary outcomes
・運動神経ブロックの持続時間(分)
・感覚神経・運動神経ブロックの効果発現時間
(局所麻酔薬注入完了から完全にブロックされるまでの時間)
・鎮痛持続時間
(最初に鎮痛薬が要求された時間 or 研究者の)
≪エビデンスの質≫
Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)ガイドラインを使用。
アウ トカム全般にわたる全体的なエビデンスの質として、「高」、「中」、「低」、「非常に低」 を決定。
※GRADEアプローチの特徴 は、プロセスを透明化しているだけでなく、エビデンスの質と推奨の大きさ(推奨度)を分離して、研究デザイン 主体によるエビデンスの評価およびエビデンスの質と数による推奨判定という従来のシステムを改善した方法。
●Primary outcome
・感覚神経ブロック時間
2研究を除くDEX群910人で検討。
コントロール群と比較して
DEX群で有意に延長。
斜角筋間法:44%
鎖骨上法:54%
鎖骨下法:21%
腋窩法:34%    延長
全体で57%、
3.8時間延長[7.7h vs 11.5h]
●Secondary outcomes
・運動神経ブロックの持続時間(分)
斜角筋間法:26%
鎖骨上:61%
鎖骨下法:19%
腋窩法:11%    延長
        
全体で58%、
3.2h延長[6.9h vs 10.1h]

・感覚神経ブロックの効果発現時間
斜角筋間法:77%
鎖骨上:44%
鎖骨下法:38%
腋窩法:24%   短縮
全体で40%、
9.2min短縮[20.0min vs 10.8min]
・運動神経ブロックの効果発現時間
鎖骨上:35%
鎖骨下法:40%
腋窩法:17%   短縮
斜角筋間法は2つの研究で短縮見られたが、他と合わせると明らかでなかった。
全体で39%、
7.8min短縮[21.2min vs 13.4min]

・鎮痛持続時間
DEXは
斜角筋間法:60%
鎖骨上:69%
鎖骨下法:0%
腋窩法:12%    鎮痛効果時間を延長
全体で63%、
4.4h延長[7.5h vs 11.9h]
DEX使用で鎖骨上・腋窩法でVAS低下したが、斜角筋間・鎖骨下法では差がなかった。
●デクスメデトミジン関連性の副作用
徐脈:OR3.3[0.8 vs 13.5]
低血圧:OR5.4[2.7 vs 11.0]
⇒一時的で可逆性。何か治療が必要でもない上に、長期的な転機に影響なし。
★サブ解析で、DEX50-60μg添加で、最も感覚神経ブロック時間が長く、循環変動が少なかった。
鎮静:OR17.2[1.04 vs 286.5]様々なスケール使用していてエビデンス低い。
低酸素イベントはなし、PONVも有意差なし。
●考察
●DEXを腕神経ブロックで添加
⇒ブロックの施行レベルによらず、
・感覚・運動神経のブロック時間↑↑、鎮痛持続時間↑↑
・作用発現時間↓↓
●24時間の術後鎮痛薬の使用量減少
●運動神経ブロック時間の延長、低血圧・徐脈・術後鎮静のリスク
⇒下肢のブロックの場合、日帰り入院で転倒のリスクの可能性
その他、
●血圧・徐脈などの循環動態の変動でリスクありの患者

・リスクがより高まる
・術中の座位などの体位変換に影響を与える可能性
●過鎮静では回復室の滞在延長や退院時期が延びる可能性
●高heterogeneityではあったが、研究間の局所麻酔薬の投与量の違いが主な原因を占めていると考えられる。
しかし慎重に結果を受け止めるべきである。
●前回のメタ解析ではDEXの臨床的な安全性についての結論を出すことができなかったが、
今回の結果では検討対象増加。
1026人で腕神経叢ブロックでDEXを添加
⇒神経毒性の兆候やほかの神経学的後遺症はなかった。
⇒in vitroや動物実験でもDEXの神経保護作用についての事実もある。
●近年のエビデンス:
静注と神経周囲注入のDEXは、腕神経叢ブロックにおいて同等に鎮痛時間を延長。
⇒作用機序についてや循環動態の変動といった相対的リスクについてはまだ明らかになっていない。
●LIMITATION
①手術の術式の違い・麻酔条件の違いなど臨床的な異質性あり。
②アウトカムの評価について、例えば鎮静具合や麻酔効果時間などの評価で研究ごとに観察的な異質性あり。
③各研究ごとの対象数が10-50人/群と少ないためtypeⅠerrorと出版バイアスが生じやすい。
④2研究が北米、欧州からの研究であり、出版バイアスが生じている可能性あり。
⑤DEXの使用量が研究によって異なるので、DEXは容量依存で感覚神経ブロック時間を延長すると報告されてはいるが、今回の結果からはそれを確定することはできなかった。
⑥英語の論文に限定したこと。
逆に長所として、
今回のレビューでは、関連のある研究を徹底的にデータベースから集約しており、研究もRCTのみとしている。
よって、統計的異質性は高いにもかかわらず、primary outcomeの結果は強固なものとなっている。