以下の論文を読みましたので紹介します。
Defining the Location of the Adductor Canal Using Ultrasound
Regional Anesthesia & Pain Medicine . 42(2):241-245, March/April 2017.

●背景
・正確な内転筋管の位置については、麻酔科医の間ではcontroversialなままである。
・TKAでACBの沢山の報告があり、大抵上前腸骨棘~膝蓋骨の上部の中点が針の刺入ポイントとなっている。
⇒ACBといわれているものも、実際は大腿三角部に薬液が注入されていて、femoral triangle blockとなっている可能性がある。(実際のACBと鎮痛効果は異なる。)
 
★エコーを使用して正確な内転筋管の位置を決定し、大腿中点との関係を明らかにすることを目的に今回調査することとした。

●方法
≪対象≫ASA1のボランティア22名
超音波装置を用いて鼡径溝から大腿動脈を追った。
大腿動脈は最初、大腿三角の中に入っていった。
縫工筋と長内転筋の内側縁が交差するところを大腿三角の尖端(青矢印)とし、大腿動脈をエコーで追った。
内転筋管は大腿三角尖端の右側始まっており、エコーでの同定は容易であった。
⇒ココを内転筋管の入り口と定義。
大腿動脈は内転筋腱裂孔(緑矢印)から出て、膝窩動脈になるところまで追った。
⇒ココを内転筋管の出口と定義。
★上前腸骨棘と大腿の中間点までの距離、内転筋管の入り口までの距離、出口までの距離を測定。
これを利用して、大腿の中間点から内転筋管の入り口までの距離、内転筋管の長さも算出。
・男性:13名、
女性:9名
の健康ボランティア。
・それぞれの長さ
・上前腸骨棘~膝蓋骨上部:45.5㎝
・上前腸骨棘~大腿中間部:22.9㎝
・上前腸骨棘~内転筋管入り口:2.4cm
・大腿中間部~内転筋管出口:4.6cm
・内転筋管の長さ:11.5cm
●考察
●内転筋管の入り口は、大腿の中間点よりも遠位にあることが示された。
⇒近年のcadaver studyでも同様の結果。
・Anagnostopoulou et al. 内転筋管の入り口は大腿中間部より遠位にある。(17献体中13献体。)
しかし、4献体は大腿中間部より近位。これはエコーと実際の献体の解剖による内転筋管の同定方法は厳密には同じではないためと考えられる。
Tubbs et al.16献体で検討。上前腸骨棘~内転筋管の入り口(内側広筋の近位端)は28cm(20-32cm) で今回の27.4cmと類似。
●多くの麻酔科医はACBを施行するとき、ランドマーク法かエコーガイドで施行する。その際、上前腸骨棘~膝蓋骨の上部の中点と今まで言われていたが、
この位置では近位過ぎるといえる。
⇒femoral triangle block(FTB)となってしまい、大腿神経の枝(膝の前内側)の鎮痛。
ACBでは内側広筋枝もブロックできるので、内側広筋枝が膝関節内部の鎮痛を司るとすると、TKAにおいてACBとFTBは異なる鎮痛効果が確認されるはずである。

仮に・・・
・内転筋管内の遠位に少量の薬液を注入⇒膝窩に広がる⇒閉鎖神経後枝・深部神経叢(伏在神経と内側広筋枝で形成)をブロック(膝関節内)
・大量に大腿三角部付近に投与⇒近位に広がり、大腿四頭筋力低下
・内転筋管内に大量に投与⇒膝窩経由で坐骨神経がブロック

●エコーは大腿三角の尖端や内転筋管の位置が同定できてランドマークよりも有用である。
⇒この時、内側広筋の二重輪郭線が内転筋管の位置決定の補助となる!!