The Erector Spinae Plane Block Provides Visceral Abdominal Analgesia in Bariatric Surgery

A Report of 3 Cases

Regional Anesthesia and Pain Medicine, 2017 May/Jun;42(3):372-376.

 

今回は、RAPMのケースレポートを読みました。体幹のブロックは様々なブロックが新たに出てきています。なぜ効くのか、全ては解明されていない側面もあるのですが知っておいて損はないと思います。

 

【背景】

病的肥満患者に対する手術は腹腔鏡で行うとはいえ、術後の鎮痛に苦慮することがある。硬膜外や腹壁のブロックは針が到達しにくいし、オピオイドも呼吸抑制があり使いづらい。

Erector Spinae Plane Block(ESPB)をTh7,8レベルの行うと胸腹部の体壁のみならず内臓の疼痛にも効果があるといわれている。

 

【症例】

症例①:35歳女性。163cm 155㎏ BMI:58.3。合併症に喘息、OSAS(CPAP使用)、mildなMR、TR、肺高血圧があった。手術は腹腔鏡下のルーワイバイパス。

全身麻酔は通常の全身麻酔を施行(おそらく、読者の皆さんが普段おこなっている麻酔かと思います。ただし、喘息があるためデスフルランではなくセボフルランを用いた、とのことでした)。ポートの創部には0.25%ブピバカイン(E入り)20ml局注を行った。

抜管後、疼痛があったためフェンタニルを使用したが改善に乏しいため、まず両側のQLB(quadratus lumborum blocks)を仰臥位で施行(0.5%ロピバカインを20mlずつ両側に注入)。しかし、上腹部の疼痛が改善せず。そこで、両側のErector Spinae Plane Block(ESPB)を行った。患者を側臥位(肥満もあるため、呼吸のことも考慮して半坐位で)にして、コンベックスプローブを用いて第7肋骨と横突起を同定(肋骨のカウントはCTやMRIの水平断を見るように、つまりプローブを背骨に対して90度となるように当てて頭側からカウント)。同定したらプローブを90度回転させ、矢状断(背骨と平行)を見るviewにする。Th7の横突起に向かって針を刺入し(論文では頭側から刺入していました)、横突起とその表層にある脊柱起立筋の間を局所麻酔薬で剥離。この症例では生食10mlに2%リドカイン5mlと1%ロピバカイン5mlを混和させたもの(合計20ml)を注入。体側にも同様に施行。

ブロック後の経過:ブロック5分後にはNRS:10/10→1/10になった。ブロック2時間後にレスキューが必要で、4~5時間おきにレスキュー必要であったがNRSは3~4/10で推移。術後3日で退院した。

 

症例②:43歳男性:179cm 171㎏ BMI:53.3。合併症にOSAS(CPAP使用)、慢性肩関節痛(プレガバリン、アミトリプチリンの内服)があった。手術は症例①と同じ。全身麻酔も症例①と同様であったが、デスフルランを用いた。ポートの創部には0.25%ブピバカイン(E入り)20ml局注を行った。

抜管後、創部痛と背部痛があり、フェンタニルを投与。一旦効果があったが上腹部痛が8/10であったために症例①と同様に両側のErector spinae plane block(ESPB)を施行。0.5%ロピバカイン20mlずつ両側に注入。
ブロック後の経過:ブロック5分後にはNRS:8/10→6/10、40分後にはNRS2/10に。7時間後にレスキューが必要にあり、4~5時間おきにレスキューが必要であったがNRSは3/10未満で推移。術後2日で退院した。

 

症例③:65歳男性 172cm 166㎏ BMI:56.1。合併症にOSAS(CPAP使用)、COPD、高血圧、糖尿病、線維筋痛症(プレガバリン内服)があった。手術は症例①②と少し違い、スリーブバイパス術を施行。しかし腹腔鏡下である点は症例①②と同じ。麻酔も症例①②と基本的には同じだが、異なるのは呼吸器場合併症を考慮して術前にESPBのカテーテル留置(over-the-needleタイプ)したこと。カテーテル越しに0.5%ロピバカイン20mlずつ両側に投与した後に全身麻酔を導入。ポートの創部には0.25%ブピバカイン(E入り)20ml局注を行った。カテーテルからは持続投与は無し。

抜管後、ピンプリックでTh7~11で疼痛無し。8時間後に、8/10の疼痛があった(上腹部痛ではなく、下腹部痛)ため、カテーテルから0.5%ロピバカイン20mlずつ両側に投与すると疼痛は8/10→5/10へ。その後もPOD1と2の朝に同様の注入を行い、術後3日で退院した。

 

【考察】

肥満手術は腹腔鏡で行うが、約半数の患者が術後NRS7以上の疼痛を経験する。創部痛は創部の局所麻酔でコントロールが可能であるが内臓痛とくに上腹部の痛みはコントロールが困難である。肥満とそれに伴う呼吸障害(OSASなど)のためopioidも使用しにくい。

Erector spinae plane block(ESPB)は脊柱起立筋の深層に薬液を注入することで結合組織を介して傍脊椎腔へ到達両側の傍脊椎ブロックや胸部硬膜外と類似の鎮痛を得ることができる。

 

【結論】

肥満手術にESPBを用いた3症例からわかることは ESPBは体壁の痛みだけでなく、内臓痛にも効果がある可能性があるということ。RCTなどのさらなる調査が必要である。

 

【感想とおまけ】

論文中のESPBの図を見ていると、retrolaminar blockと非常に似ているなと感じました。新しい体幹のブロックは実際にやってみても論文の通りの鎮痛効果が得られなかったりすることもあり、奥が深いと感じます。今後の解明が待たれます。

以下はおまけですが、下記HPに実際に今回の症例の紹介やErector spinae plane block(ESPB)の方法を論文の著者であるKi Jinn Chin先生が紹介されています。もちろん英語ですが・・・。Ki Jinn Chin先生にはカナダで一度お会いしたことがあります。とても温厚な先生で、こちらがしどろもどろになりながら質問しても、丁寧にお答え下さいました。Ki Jinn Chin先生の英語は聞き取りやすかったように記憶しています。お時間のある時に、ご参照ください。