以前腕神経叢ブロックとデクスメデトミジンのシステマティックレビューを紹介しましたが、今回は以下の腕神経叢ブロック鎖骨上法とクロニジンまたはデクスメデトミジンを添加した際の研究のレビューを読みました。
●Perineural Dexmedetomidine Is More Effective Than Clonidine When Added to Local Anesthetic for Supraclavicular Brachial Plexus Block: A Systematic Review and Meta-analysis
Anesthesia & Analgesia(2017)124(6):2008-20

●背景
・1966年に初めて降圧薬が紹介され、1991年よりα2アゴニストである、clonidineが局所麻酔薬の効果時間延長のために添加されるようになった。しかし、徐脈や低血圧といった循環変動の副作用もあった。
・1999年に承認された新しい鎮静薬である、α2アゴニストのDexmedetomidine(以下DEX)はClonidineよりα2選択性が強く、より循環変動の副作用が少ないのに局所麻酔薬の効果時間延長を望めると考えられた。
上肢の手術における単回投与の腕神経叢ブロック(鎖骨上法)におけるclonidineまたはDEXの添加と感覚神経遮断時間を比較。
●方法
・電子データベースで、1945-2016年のランダム化比較試験を検索。
・検索ワード:(1)SCB or (2)brachial plexus block or nerve block,(3)dexmedetomidine,(4)clonidine
・評価者は、 2人の研究者が独立して評価。
・出版バイアスの存在の評価:フェンネルプロットを用いて評価。
・研究の異質性heterogeneityの評価:I2統計量を用いて評価。
⇒ 50%を超えると異質性は大きいと判断。
≪アウトカムの評価≫
●Primary outcome
・感覚神経ブロックの持続時間
(局所麻酔薬注入完了から完全に感覚神経ブロックから完全に回復した時間)
●Secondary outcomes
・運動神経ブロックの持続時間
・感覚神経・運動神経ブロックの効果発現時間
(局所麻酔薬注入完了から完全にブロックされるまでの時間)
・鎮痛に関するアウトカム
(術後のVAS、鎮痛持続時間:最初に鎮痛薬が要求された時間 or 研究者の定義、オピオイドの消費量、鎮痛に関する患者満足度)
・α2アゴニストに関連する副作用(低血圧、徐脈、研究者の定義)
・そのほかの副作用(過鎮静、呼吸抑制、嘔気・嘔吐、頭痛、眩暈、口腔内乾燥、霧視、掻痒感)
・ブロック関連合併症(出血、血腫形成、局所麻酔中毒、気胸、ホルネル症候群、腕神経叢分布領域の神経学的症状)
●結果
データベース検索:834件⇒最終的に14件のRCTsが対象。
全体:868人の患者(DEX群419人、clonidine群419人)
●Primary outcome
感覚神経ブロックの持続時間:14研究で比較。
clonidine群と比較してDEX群で有意に延長。1.2 倍延長[549.5 min vs 361.1min]
異質性が高い。
⇒メタ回帰分析で、ブロックの手法(USG/神経刺激/痺れ誘発)局所麻酔薬投与量の違いにより、臨床的異質性が高い。出版バイアスはfunnel plotやEgger testで示されなかった。
●Secondary outcomes
・運動神経ブロックの持続時間
14研究で比較。clonidine群と比較してDEX群で有意に延長。1.2 倍延長[497.3 min vs 335.2min]
・感覚神経ブロックの効果発現時間
13研究で比較。clonidine群と比較してDEX群で有意に早まった。0.9倍に短縮[6.4 min vs 8.0min]
・運動神経ブロックの効果発現時間
13研究で比較。clonidine群と比較してDEX群で有意に早まった。0.9倍に短縮[9.9 min vs 11.6min]
・鎮痛に関するアウトカム
鎮痛持続時間
12研究で比較。clonidine群と比較してDEX群で有意に延長。1.2 倍延長[652.1 min vs 447.2min]
他の術後の体動・安静時VASや鎮痛薬の消費量、患者満足度は一貫した報告なし。
・α2アゴニストに関連する副作用:検討されている論文がほとんどなし。(例:低血圧1研究、徐脈3研究など)
⇒Limited dataから検討。徐脈はDEX>clonidine 7.4倍
・過鎮静は10研究で報告。DEX27人>clonidine13人 11.8倍
・嘔気・嘔吐は1研究で報告。有意な差はなかった。

●考察
鎖骨上法において、局所麻酔薬への添加としてはDEXの方が優れていた。
≪メカニズムの考察≫
α2受容体は軸索にはないが、末梢神経・脊髄神経の終末枝(求心路)に存在。
α2アゴニストは末梢神経に対しては、恐らくα2受容体を介さないで作用。

①過去に、DEX/Clonidineともに末梢神経の過分極を惹起する陽イオン電流の遮断による作用を持つと報告あり。
②DEXはclonidineよりα2受容体への親和性が強いので、より強く活動電位を阻害する。
③DEXは運動神経(Aα・Aγ)よりAδ・C繊維の活動電位をより強く遮断するため、感覚神経の方が運動神経より強くブロックされた。
★まとめ
今回のレビューで、conidineと比べ、dexmedetomidineは腕神経叢ブロック鎖骨上法での単回投与の局所麻酔薬への添加において、・効果持続時間を延長、作用発現時間を短縮、術後鎮痛効果を延長する。
⇒徐脈のリスクもあるのでその点には気を付けるべき。