少し古い論文ですが、今回は

Ultrasound-Guided Single-Injection Infraclavicular Block Versus Ultrasound-Guided Double-Injection Axillary Block: A Noninferiority Randomized Controlled Trial.

Anesth Analg. 2016 Jan;122(1):273-8.

を紹介しました。

 

【背景】

腕神経叢ブロック鎖骨下アプローチ(以下:鎖骨下ブロック)の1か所注入法はシンプルで効果的な方法である。また、腕神経叢ブロック腋窩アプローチ(以下:腋窩ブロック)の2か所注入法は高い成功率を示している。腋窩ブロックは表層のブロックであり、(仮に出血などをしても)圧迫がしやすい場所である。

しかし、この腋窩ブロック2か所注入法の効果を鎖骨下ブロックの1か所注入法と比較した研究はない。

そこで、著者らは「腋窩ブロック2か所注入法を施行30分後の感覚遮断の成功率は鎖骨下ブロックの1か所注入法と比較して、劣ってない」という仮説を立てて立証しようとした。

 

【方法】

鎖骨下ブロック1か所注入法

1.5%メピバカイン30mlを腋窩動脈の後方(図の☆の部位)に注入

 

腋窩ブロック2か所注入法

1.5%メピバカイン30mlを下記のように注入(上図☆の2か所に注入)

5mlは筋皮神経の周囲に注入

25mlは腋窩動脈の後内側に注入

 

主要評価項目は:ブロック30分後のcomplete sensory blockの割合

副次評価項目は:感覚神経ブロックおよび運動神経ブロックのオンセット、追加の処置なしに手術が出来た割合、手技の施行時間、合併症の割合

とした。すべての評価項目はブラインド化された評価者が行った。

腋窩ブロック2か所注入法のcomplete sensory blockの割合(ブロック30分後)の90%信頼区間が、鎖骨下ブロック1か所注入法の      complete sensory blockの割合-10%以内にあれば、腋窩ブロック2か所注入法は鎖骨下ブロック1か所注入法に劣らない、とすることにした。

【結果】

ブロック30分後のcomplete sensory blockの割合は

・腋窩ブロック群:79%(90% 信頼区間は71%–85%)

・鎖骨下ブロック群:91%(90% 信頼区間は85%–95%)

で、有意に鎖骨下ブロック群の方が高かった(P=0.0091)。

・ブロック30分後のcomplete motor blockの割合(P=0.0089)や追加の処置なしに手術が出来た割合(P=0.0153)も、有意に鎖骨下ブロック群が高かった。

・感覚神経ブロックのonsetは腋窩ブロック群で有意に遅かった(P = 0.0020)。

・ブロックの施行時間は鎖骨下ブロック群の方が短かった(P < 0.0001)。

・血管穿刺、穿刺時の異常感覚、穿刺による疼痛の割合などは2群間で差がなかった。

 

【考察】

腋窩ブロックの成功率(ブロック30分後のcomplete sensory block)が鎖骨下ブロックの成功率(ブロック30分後のcomplete sensory block)よりも10%低いぐらいなら(=81%以上であれば)非劣性、つまり腋窩ブロックは鎖骨下ブロックに劣らないとする、と定義した。

鎖骨下ブロックの成功率が91%で、腋窩ブロックの成功率は79%。この79%は91-10=81%よりも低い。しかし腋窩ブロックの成功率の95%信頼区間は71-85%であり、一部は81%以上であるため非劣性と言えなくもないが、ブロックの成功率(ブロック30分後のcomplete sensory block)は、腋窩ブロックの方が有意に低かったため、非劣性とは言えない。

腋窩ブロックが鎖骨下ブロックに効果が劣らなければ腋窩ブロックの方が施行しやすい(浅い。安全)ので

非劣性を証明したかったが、至らなかった。腋窩ブロックでの正中神経領域の成功率が低いことが腋窩ブロックの成功率を下げた一因かもしれない。

【結論】

上肢の麻酔の際には、腋窩ブロック2か所注入法よりも鎖骨下ブロック1か所注入法の方が好ましい

 

【感想】

腋窩ブロック vs. 鎖骨下ブロック云々という事よりも、非劣性試験は非劣性マージンの設定やサンプルサイズの設定など、優位性試験とはまた違った考え方が必要になりますので解釈も難しいですし、自分で研究として計画するのはさらにハードルが高そうだな、というのか率直な感想でした。