開心術でTEGとROTEMのそれぞれの検査値を比較した論文を紹介しました。

論文は「An Assessment of Clinical Interchangeability of TEG and ROTEM Thromboelastographic Variables in Cardiac Surgical Patients」

ANESTHESIA & ANALGESIA 2010 です。

 

背景…TEGとROTEMはpoint-of careのデバイスとして使用が増加している。これらの検査結果を用いて輸血の指標とするアルゴリズムもある。2つの検査は原理的に似ており、それぞれに対応する結果があるが、それを同等のものとして解釈していいのかはわかっていない。TEGとROTEMの検査結果が同等なものかどうか心外手術で比較した。

 

方法…46人の定期開心術を受ける症例に対してnative TEG, kaolin TEG, intrinsic RoTEM(INTEM), extrinsic RoTEM(EXTEM)を施行。

TEGに関してはR,K,MA,αを記録、ROTEMに関してはCT,CFT,MCF,αを記録。

便宜上ROTEMの検査結果もR,K,MA,αとして統一。

検査の再現性を見るために2人のボランティアで7連続でそれぞれの検査を施行。

 

結果…

kao TEG: R(sec)345±102、K(sec)78±18、MA(mm)71±6.5、α(degrees)72±4.1

nat TEG: R(sec)1141±561、K(sec)462±41、MA(mm)57±11.8、α(degrees)38±18.3

inTEM: R(sec)179±74、K(sec)75±52、MA(mm)67±5.2、α(degrees)76±7.0

exTEM: R(sec)55±28、K(sec)69±6.3、MA(mm)69±6.3、α(degrees)78±4.5

mean±SD

外れ値(±3SD以上)は

nat TEG: R1、K0、MA1、α1、計3

kao TEG: R2、K0、MA1、α0、計3

inTEM: R5、K2、MA0、α5、計12

exTEM: R5、K0、MA0、α0、計0

と各検査でRの値に外れ値が多かった。

 

Mixed-Model Analysisではそれぞれの検査値を対数変換してkao TEGを1とすると

kao TEG: R…1(0.92-1.08)、K…1(0.92-1.08)、MA…1(0.96-1.04)、α…1(0.95-1.05)

inTEM: R…0.50(0.41-0.62)p<0.001*、K…0.85(0.68-0.96)p=0.11、MA…0.94(0.90-0.99)p=0.02*、α…1.05(0.92-1.20)p=0.43

exTEM: R…0.14(0.12-0.18)p<0.001*、K…0.73(0.60-0.90)p=0.003*、MA…0.98(0.93-1.03)p=0.38、α…1.09(0.96-1.24)p=0.17

(95%CL)

 

Bland-Altman plotではkaoTEGとINTEMではRのバイアスが0.76で数値としてはおよそ2倍kaoTEGのRが大きい。Kはバイアス0.22。

kaoTEGとEXTEMではRのバイアスが1.97で数値としてはおよそ7倍KaoTEGのRが大きい。Kはバイアス0.36。MAとαに関しては双方ともによく一致という結果だった。

 

2人のボランティアでそれぞれの検査の再現性を検討したものではRの再現性はpoor, Kはそれより少しいいがpoor, MAとαはばらつきが10%未満。検査としてはkaolin TEGがTEGの中では再現性がよく、ROTEMの中ではEXTEMが再現性がよいという結果だった。

 

Discussion…

TEG、ROTEMの比較でMAとαはよく一致し、RとKはばらつきが大きかった。

KaoTEGのMAとαとEXTEMのMAとαが一番よく一致した。

第一のTEGとROTEMの差はカップを回すか、キュベットを回すかによるものでこれは摩擦(MA)の強さが変わると思われたが今回の研究でMAは変わらず。

第2の差はTEGは血液サンプルがあまり希釈されないの対してROTEMはおよそ10%に希釈される。ROTEMで凝固のonsetがTEGより早い(R↓、K↓)理由の1つかもしれない。(生食で血液を希釈するとRとKが短縮する Ruttmann et al 2006)

第3の差はactivatorの差である。EXTEMでは組織因子がactivatorとして使われているがEXTEMで一番凝固の開始が早い。しかしactivatorによりRとKのばらつきが大きくなっている可能性もある。どの検査もactivatorによってMAに差はでなかった。これは一度凝固が始まればその後の凝固プロセスにactivatorは関与していないのではないか。

いくつかの輸血アルゴリズムではRの値を使っている。全体としての血液凝固の解釈は必要だがRはばらつきが大きいためMAやαを使うべきではないか。