A randomized trial of phenylephrine infusion versus bolus dosing for nausea and vomiting during Cesarean delivery in obese women.

Can J Anaesth. 2018 Mar;65(3):254-262.

George RB, McKeen DM, Dominguez JE, Allen TK, Doyle PA, Habib AS.

 

最近、帝王切開時に吐気を訴えられることが多かったため、関連記事を読んでみました。

【Abstruct】

  • 帝王切開時の脊椎くも膜下麻酔時の低血圧は74%に起こるといわれ、嘔気、嘔吐の原因になり(それによりアシドーシスになる)患者満足度を下げる
  • 機序としては、脳と腸管の低灌流により脳幹の嘔吐中枢が刺激され、セロトニンを放出するため②交感神経遮断され副交感神経優位になり腸蠕動運動が活発化すると言われている
  • フェニレフリンは硬膜外周辺の静脈の怒張を抑えられ、脊椎麻酔施行時の出血も抑えられ、血行動態の安定で新生児の安全も確保できるので、とても有用
  • 今までの報告:低血圧からのフェニレフリン単回投与ではなく、予防的なフェニレフリン投与で、術中低血圧を減らし(88%→23%)、術中嘔気嘔吐も減らせた(21%→4%)報告があるが、肥満やるい痩は除外されている
  • 日本ではあまり見ないくらいの肥満度であるが、アメリカでは30~35%の妊婦がBMI>30以上の肥満
  • 肥満妊婦は正常範囲妊婦とは異なる麻酔効果が期待される(脳脊髄液の減少など)が、実際投薬液を減らすべきかか??は議論されている
  • 肥満妊婦の術中嘔気嘔吐(intraoperative nausea and vomiting:IONV)発生を、フェニレフリン持続投与とフェニレフリン単回投与の場合で比較する

 

【方法】

多施設二重盲検ランダム比較試験

BMI 35~55、36週以上の定期選択帝王切開を受ける妊婦178名

(術前除外:身長<152cm、術前24時間以内の制吐剤使用、上腕外周長>46cm、妊娠高血圧や既存心疾患。術中除外:ルンバール失敗、術中昇圧剤必要なし、薬を床に落とした、フェニレフリン以外でレスキュー、娩出までに1時間以上など)

→最終的に ①持続投与群81名 ②単回投与群 79名

▲麻酔導入

  • 入室後に2分間隔で3回の非観血的血圧測定 (子宮左方移動)→3回の収縮期血圧の平均をbase-SBP
  • 低血圧の定義:base-SBP<80%、またはSBP<90mmHg
  • 術前にクエン酸ナトリウム30ml投与

▲術中

  1. 試験に参加しない麻酔科医が、ブラインド化された持続投与用60mlシリンジA(フェニレフリン100μg/ml or 生食)とボーラス投与用20mlシリンジB(フェニレフリン100μg/ml or 生食)をセット
  2. L3-L5間で高比重0.75%ブピバカイン12mg(1.6ml)+フェンタニル15μg+モルヒネ150μgを投与後、すぐに仰臥位+子宮左方移動
  3. ルンバール後すぐに、シリンジAを30ml/hrで投与開始し、base-SBPの20%前後に維持を目標
  4. 低血圧になったら、シリンジAを60ml/hr(100μg/min)にし、シリンジBを1ml投与する
  5. 除脈(<50bpm)になったらグリコピロレート(ムスカリン性抗コリン薬)0.2mgを投与
  6. 児娩出までに乳酸リンゲル液2L投与
  7. 児娩出後は素早くオキシトシンを5U静脈投与し、12.5U-25U/hrの持続投与を開始
  8. 低血圧に起因しないIONVはオンダンセトロン4mgを静注
  9. 低血圧起因のIONVは、低血圧が測定される直前後での症状出現をいい、0-10の10段階で吐気スコアリングしてもらう
  10. 術後0-2時間と2-24時間の吐き気、嘔吐回数、制吐剤の使用を情報収集
  11. 術後すべての患者にアセトアミノフェン、ナプロキセン(NSAIDS)をPACUで投与され、それ以上の疼痛には5-10mgのオキシコドンを内服

 

Primary outcome

  • IONVの出現の有無

Secondary outcome

  • レスキューの制吐剤使用の必要性周術期のIONVに対する介入の満足度低血圧外科医からbase SBPの20%以内の変動依頼(持続投与の増減・中止、ボーラス投与、抗コリン薬の投与)
  • SBP>120%の高血圧
  • 児娩出前後の低血圧
  • PONVの有無
  • 低血圧がIONVを誘発したか

【結果】

背景:BMI平均41(35-55) (私の身長157cmだと101kg・・・)

PONVリスクなどの背景で有意な差なし

10分後にだいたいTh4の麻酔高

オキシトシンプロトコール以外での子宮収縮剤の使用なし

 

▲術中

  • ボーラス投与群の術中制吐剤使用が有意に多い、低血圧起因のIONVが有意に多い、嘔気の訴えが有意に多い

▲術後評価

  • PONVや術後の制吐剤使用には有意差なし

▲血行動態

  • ボーラス投与群で介入回数、娩出前後の低血圧、低血圧起因のエピソードが有意に多い
  • 娩出前の高血圧・除脈は持続投与群で有意に多い

 

多施設間で行っていたため、施設間比較すると全体結果との相違がみられました→IONV発生に有意差なし(オペ時間、輸液量、出血量、子宮露出の有無に有意差があったからだろうか)

【Discussion】

  • やせ型妊婦のフェニレフリン予防投与は、児娩出前の低血圧や低血圧起因の症状は著明に減らしたが、IONV自体は46%にとどまっている報告がある
  • 子宮の露出がIONVを起こすといわれていた(最近のsystematic reviewでは関連なしと報告された・・・)
  • 正常体型妊婦の場合、持続投与群では低血圧は16-19%にしか起こらなかったのに、今回の肥満妊婦の場合は27%に低血圧が生じた(交感神経遮断が広範囲に広がった・・・)
  • 術中嘔吐の頻度は有意差なかったが、術後2時間までの嘔吐がボーラス群で多かった

 

【結語】

肥満妊婦において、予防的フェニレフリン持続投与は、レスキュー単回投与よりもIONVの頻度を減らした

今後は、予防的制吐剤投与による検討をしたい

 

★今回のようにフェニレフリンを使用した場合、娩出される新生児への影響はあるのか。カテコラミン、ノルアドなどの昇圧剤も含めて胎児・新生児への影響も気になるところである