心臓弁膜症手術で術前のHbA1cは術後の有害事象の予測因子になるかという論文がありましたので読みました。

 

The Association Between Preoperative Hemoglobin A1C and Postoperative Glycemic Variability on 30-Day Major Adverse Outcomes Following Isolated Cardiac Valvular Surgery

Amit Bardia, MBBS, Kamal Khabbaz, MD, Ariel Mueller, MA, Priyam Mathur, MS, Victor Novack, MD, PhD, Daniel Talmor, MD, MPH, and Balachundhar Subramaniam, MBBS, MD, MPH

JANUARY 2017 Volume 124 –  Anesthesia & Analgesia

〇 背景

術前HbA1cおよび術後血糖変化は、CABG後の主要有害事象(MAE)を予測するといわれている。しかし、心臓弁膜症手術における術前HbA1cおよび術後血糖変動がどのようにMAEに影響するかは不明である。そこで心臓弁膜症手術に焦点を当て、術前HbA1cがMAEのリスクの高い患者を特定可能か、さらに術後血糖変動やMAEと関連するかを明らかにすることを本研究の目的とした。

〇 方法

2008年1月‐2013年12月にBeth Israel Deaconess Medical Centerで行われた前向き研究で、弁手術を受けた18歳以上の患者を対象とした。MAEは院内死亡・心筋梗塞・再手術・胸骨感染・心タンポナーデ・肺炎・脳卒中・腎不全を対象疾患とした。術後期間の血糖は、変動係数によって評価し、HbA1c(<6.5%または≧6.5%)によって階層化した。連続変数はt検定・Wilcoxon Mann-Whitney U 検定、カテゴリーデータは Pearson χ2・Fisher exact検定、交絡因子は多変数ロジスティック回帰にて統計を行った。

〇 結果

心臓手術を受けた4088人中、冠動脈バイパス術、大動脈手術、心房細動手術、HbA1cが未検査患者は除外し、対象患者は763人だった。術前HbA1cは85.7%が6.5%未満であり、6.5%以上の患者は、高齢、脂質異常症の有病率、STSリスクスコアが有意に高値であった。術後MAE発症率はHbA1c毎で有意差は認めなかった。術前HbA1c毎の術後血糖変動は、術前HbA1cが高値の場合、術後4時間の血糖値も優位に高値であったが、術後高血糖(BS200以上)や低血糖(BS60以下)の発生率は術前HbA1cと関連が無かった。

〇 結論

心臓弁膜症手術においての術前HbA1cと術後血糖の変動及びMAEは関連性を示さず、CABG患者とは対照的な結果となった。一般的に心臓手術では、手術前後の血糖値<180mg / dLに維持するよう推奨されており、周術期の高血糖は、胸骨傷害や死亡などのMAEに関連するが、集中的な血糖コントロールは、かえって低血糖リスクのために有害である。CABG患者のような血糖が病期を進行させることが明らかになっている疾患に限って血糖コントロールをし、MAEの低下を目標とすべきであり、リスクの高い集団を特定し、術後アウトカム改善をめざすことが重要である。