2019年1月21日に日本麻酔学会からスガマデクスの適正使用に関する注意喚起が出されました。

MSD株式会社によると、2018年1月31日時点で国内において筋弛緩の再発(再クラーレ化)が36件報告されています。

 

“残存筋弛緩”と“筋弛緩の再発(再クラーレ化)”の違いはわかりますか?

現在の残存筋弛緩の定義は、“加速度感知型筋弛緩モニターでTOF比<1.0(or 0.9)”です。

 

筋弛緩の再発(再クラーレ化)の定義は、

A decrease in the TOF ratio from“equal to or greater than 0.9” to“less than 0.8“in at least 3 consecutive TOF values.

つまり、TOF比≥0.9に回復後、最低でも3回連続TOF比<0.8となった場合とされています。

 

Eleveld DJ et al. Anesth Analg 2007; 104: 582-4

Duvaldestin P et al. Anesth Analg 2010; 110: 74-82

Iwasaki H et al. J Anesth 2014; 28: 288-290

上記の論文や報告では、PTC1-2の時点でスガマデクスを0.5mg/kg(推奨量の1/8)を投与し、筋弛緩のリバウンドをしていますが、どれも再クラーレ化の定義に当てはまらないため、

Recurarizationではなく、a temporary decrease in twitch responseと表現されています。

どのように定義に該当しないかというと、最初の回復がTOF比≥0.9とならないのです。

ですので、再クラーレ化が起こる状況は、色々な条件が偶然重なった時に起こることが想像できます。

(単にスガマデクスが足りないだけでは、回復不全になるだけです。)

 

MSD株式会社の症例報告を確認すると、体重61kgの80代の男性に対し、ロクロニウム50mg投与し、その1時間後よりロクロニウムを30分おきに25mg投与する(当然筋弛緩モニターなし)という想像を絶するロクロニウムの使い方をし、最後にスガマデクス200mgを投与された患者が再クラーレ化しています。

 

このように、スガマデクスの使い方だけでなく、ロクロニウムの使い方にも問題があると再クラーレ化を引き起こすように感じます。

 

まとめですが、

1.残存筋弛緩と再クラーレ化は同じではありません。残存筋弛緩の中に再クラーレ化が含まれるイメージです。

2.スガマデクスは添付文書通り使用して、残存筋弛緩や再クラーレ化が起こった報告はありません。最低でもスガマデクスは筋弛緩モニターの反応をみて投与すべきだと思います。

3.スガマデクスだけでなく、ロクロニウムの使い方が悪い人は再クラーレ化を起こすリスクが高いです。

 

余談ですが、

英論文において、Recurarizationという単語は査読で指摘される傾向にあります。Recurarizationや再クラーレ化という単語は古い筋弛緩薬である“クラーレ”からきているからです。

現在ではRerocuronizationや再ロクロニウム化というのが正しいのかもしれません。(造語ですが。)

ですので、論文や講演では、recurrence of neuromuscular block, rebound of neuromuscular blockや、筋弛緩のリバウンドという単語を用いるようにしています。

 

岩崎肇