以前担当した腹腔鏡下子宮全摘症例で、内臓痛を訴えられた患者様がいらっしゃったため、オピオイド以外の鎮痛方法を調べていたら、以下の論文があったので読んでみました

 

Intraperitoneal Instillation of Lidocaine Improves Postoperative Analgesia at Cesarean Delivery:A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial

Ruchira Patel, MBBS, Jose C. A. Carvalho, MD, PhD,Kristi Downey, MSc,  Marcelo Kanczuk, MD, Paul Bernstein, MD, and Naveed Siddiqui, MD, MSc

February 2017 – Volume 124  Anesthesia & Analgesia

 

〇背景

米国において、帝王切開術は増加傾向であり、産後の強い疼痛は、分娩後うつ病のリスクを3.0倍増加させるといわれており、より質の高い鎮痛が求められる。また、近年腹腔内局所麻酔薬投与(IPLA:intraperitoneal local anesthetics)という手法が腹腔鏡下胃摘出術、胆嚢摘出術、開腹子宮摘出術で報告されるようになった。しかし、帝王切開後の鎮痛効果としてIPLAを使用することを調査した研究は少ない。そこで本研究では、帝王切開後疼痛に対するリドカインの腹腔内投与の効果を調査することを目的とした。

 

〇方法

無作為化二重盲検試験で、予定帝王切開の患者に脊椎麻酔(1.8ml高比重マーカイン+10μgフェンタニル、100μgモルヒネ)を施行した。その後Pfannenstiel切開、分娩、子宮閉鎖した後、リドカイン群として2%リドカイン(E入り)を20mL、プラセボ群として生理食塩水を20mL子宮の各四分円上に5mLずつ噴霧した。疼痛の評価はVASを使用し、手術終了時にケトロラク30 mg、アセトアミノフェン坐剤1300 mg、8時間毎にジクロフェナク50㎎の経口投与、6時間ごとにアセトアミノフェン1000㎎を投与した。解析はロジスティック回帰モデルを用い、Primary outcomeとして術後24時間の体動時痛のVAS、Secondary outcomeとして術後2・48時間の体動時・安静時痛のVASを設定した。

 

〇結果

対象は193人(リドカイン群 99人、プラセボ群94人)で、両群に有意差は無かった。術後2時間の安静時・体動時のVASに有意差が認められたが、Primary outcomの24時間後体動時痛には有意差が無かった。サブグループ解析では腹膜閉鎖した場合24時間後の体動時痛に有意差を認めた。

 

○考察

リドカインの腹腔内投与は、24時間後の体動時痛に有意差を認めなかった。しかし、術後2時間で有意差を認め、以前の研究でも腹腔鏡下婦人科手術の場合、術後1〜2時間で疼痛スコアの減少を認めたことから、妥当な結果だと考える。さらに、腹膜閉鎖した場合、24時間体動時の疼痛スコアの減少に有意差を認め、腹膜閉鎖を行うことで周囲への分散が少なく、対象臓器に長くとどまるためと考察する。